① 冬になると、指輪が抜けにくくなる
夏はするっと回る結婚指輪が、12月を過ぎたあたりから同じ指なのにきつくなる。むくみなのか乾燥なのか、原因は自分では分かっていない。ただ、冬になると手のコンディションが変わるのは毎年のことだった。
この時期になると、ドラッグストアのハンドケア売り場にも100円ショップにも、白い綿の手袋が並ぶ。ハンドクリームを塗ってから手袋をして寝る、というあれだ。ただ売り場に置かれているものはパッケージも色もサイズ展開も女性向けで、男が手を伸ばす場所には見えない。
調べてみたら、これは好みや気分の話ではなかった。皮膚科で「密封療法」と呼ばれる、名前のついたやり方だった。そして効果が上がるかどうかは、手袋の素材と洗う頻度でほぼ決まる。
② 結論:効果は上がる。ただし条件がある
先に答えを書く。
- ハンドクリームを塗ってから手袋をして寝ると、塗っただけの状態より保湿の効き方は上がる
- 理由は「密封して、水分が逃げるのを防ぐ」から
- 素材は綿。吸湿性の低い化学繊維だと逆効果になりうる
- 手袋は毎日洗う。クリームの油分が残ったまま使い回さない
- 化膿している傷や水虫があるときは、やってはいけない
「手袋をすれば何でもいい」ではないところが、この話のポイントになる。
③ 密封すると何が起きているのか
ここは感想ではなく、医療機関の説明を確認しておきたい。医療法人緑生会 大木皮ふ科クリニック(相模原市南区・皮膚科・アレルギー科)の解説では、クリームを塗った上から手袋で覆う方法は密封療法(ODT/Occlusive Dressing Therapy)と呼ばれ、次のように説明されている。
- 皮膚表面の水分蒸発を防ぎ、角質層を柔らかく膨潤させる効果がある
- 皮膚表面の温度が上がって血行が促進される
- 角質層が水分を含んだ状態になるため、有効成分が深部まで浸透しやすくなる
つまり手袋は、保温のためでも、見た目のためでもない。塗ったものを逃がさないためのフタとして働いている。塗ってそのまま寝ると、クリームは寝具に移るし、水分は空気中に逃げていく。手袋はその両方を止めている。
出典:大木皮ふ科クリニック「寝る時の綿手袋とハンドクリーム|手荒れを治す密封療法(ODT)の効果と注意点」
④ 素材で結果が変わる。基本は綿
同じ解説では、素材ごとの向き不向きにも触れられている。
| 素材 | 就寝時の向き | 理由 |
|---|---|---|
| 綿(コットン) | ◎ 基本これでいい | 吸湿性に優れ、手袋内部の湿度を保てる。繊維の先端が丸く、荒れた皮膚に触れてもチクチクしない |
| シルク | ○ | 吸湿・放湿性は綿以上。ただしアルカリ性の洗剤に弱く、手洗いが推奨される |
| 化学繊維 | △ 選ばない | 吸湿性が低いものが多く、皮膚がふやけてバリア機能が低下する |
迷ったら綿でいい。シルクは性能では上だが、洗濯の手間が増える。後で書くとおりこの方法は毎日洗うのが前提なので、手洗いが必要な素材は続かなくなりやすい。
スマホ対応手袋を就寝用に流用しない
指先だけスマホが使える手袋を1双持っていると、これで代用したくなる。ただしスマホ対応をうたう製品は導電性の糸を編み込んでいるものが多く、素材表示を見ると化学繊維の混紡になっていることがある。
就寝時はスマホを触らないのだから、この機能はそもそも要らない。外出用と就寝用は別のものとして考えたほうがいい。買うときは色や値段ではなく、タグの素材表示を見る。
⑤ 手袋は毎日洗う
ここが一番見落とされるところだと思う。同じ解説では、可能な限り「毎日」洗濯することが求められている。理由は衛生面の一般論ではなく、はっきりしている。
クリームの油分が酸化して繊維に残ると、接触性皮膚炎やかぶれの原因になるとされている。手を保湿するためにつけた手袋が、洗わないまま使い回されると、逆に肌に触れて困るものに変わるということ。
現実的には、2〜3双を回すのが続けやすい。1双しかないと「今日は洗えていないから、まあいいか」で使ってしまう。100円ショップで買い足せる範囲の話なので、ここはケチらないほうがいい。
⑥ やってはいけない場合がある
「ハンドクリーム 手袋 ダメ」で検索している人がいる。実際、やらないほうがいい状況ははっきり示されている。
化膿した傷や、水虫などがあるとき
白癬やカンジダなどの真菌、化膿した傷がある場合、密封療法は絶対に行ってはいけないとされている。密封された内部は温度と湿度が上がるので、細菌やカビにとっては増殖するのに都合のいい環境になるため。
処方された塗り薬を使っているとき
皮膚科で処方されたステロイド軟膏を使っている場合は、自己判断で密封しないこと。密封すると薬剤の吸収率が数倍から数十倍に跳ね上がるとされていて、強すぎる副作用が出るおそれがある。やるかどうかは医師の指示を仰ぐ、と明記されている。
市販のハンドクリームで保湿する話と、処方薬の話は分けて考える必要がある。この記事で扱っているのは前者だけ。
⑦ 仕事中に手袋をするのはどうなのか
同じ発想で日中もやろうとする人がいるが、これは分けて考えたほうがいい。理由は3つある。
- キーボード、スマホ、紙をめくる動作のほとんどが手袋だとやりにくい
- オフィスで白い綿手袋をしていると、確実に理由を聞かれる
- そもそも密封の効果は、動かず長時間つけている就寝時にいちばん出る
日中は「ベタつかないものを薄く塗る」、夜は「しっかり塗って手袋で密封する」。この役割分担にしたほうが無理がない。日中に何を選ぶかは仕事中にベタつかないハンドクリームの条件のほうで書いた。
例外は、水仕事や掃除で手が濡れる場面。このときは保湿目的ではなく、水と洗剤から手を守る目的でゴム手袋を使う。中に綿手袋を重ねると、ゴムの内側の蒸れを吸ってくれる。目的が違うので、就寝時のケアとは別の話になる。
⑧ 100円ショップのもので足りるのか
足りる。というより、この方法で必要な条件は「綿であること」と「毎日洗えること」の2つしかないので、価格はほとんど関係ない。
選ぶときに見るのはここだけでいい。
- 素材表示に綿と書いてあるか(「コットン100%」または綿の比率が高いもの)
- サイズが合っているか(きついと血行を妨げるし、緩いと寝ている間に脱げる)
- 洗い替えとして2〜3双そろえられるか
男性は手が大きいので、ここだけは注意がいる。ハンドケア用の綿手袋は女性向けのサイズ展開が中心で、Mサイズだと指の付け根で止まってしまうことがある。作業用として売られている白い綿手袋のほうが、サイズは選びやすい。
使うハンドクリーム自体は、正直そこまで神経質にならなくていい。
ただ、手袋をつける前提なら、ベタつきが強すぎるものより、なじみが早いもののほうが手袋への色移りやにおい残りが少なくて扱いやすい。
俺は普段からNULL薬用ハンドクリームを使っていて、夜の密封ケアでもそのまま流用している。
→ 男がハンドクリームを使うのは気持ち悪い?結論とデータで答える(気になる人はこちらもどうぞ)
⑨ まとめ
- ハンドクリーム+手袋で寝ると保湿の効き方は上がる。密封療法(ODT)という名前のついた方法
- 効くのは、水分の蒸発を防いで角質層が水分を含んだ状態になるから
- 素材は綿。化学繊維は吸湿性が低く、ふやけてバリア機能が下がる
- 毎日洗う。油分が酸化して繊維に残ると、かぶれの原因になる
- 化膿した傷・水虫があるときはやらない。処方薬の密封は自己判断でやらない
- 日中は薄く塗る、夜は密封する。役割を分ける
やることは「塗って、綿の手袋をして寝て、朝洗う」だけで、道具は100円ショップでそろう。冬に手のコンディションが落ちるのが毎年のことなら、12月に入る前に2〜3双買っておくくらいでちょうどいい。
そもそも仕事中に手が乾く理由のほうが気になる場合は、仕事中に手が乾燥しやすいのはなぜかにまとめてある。


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